ドロ痛な恋が甘すぎて


「綾星くん?」


 俺の腕の中に納まっているほのかが、心配そうに俺を見上げた。

 ほのか、わかってやってるの?

 その上目遣い、マジで可愛すぎだからな。

 そんな透き通った瞳で見つめられたら、今すぐお前の唇を奪いたくなるんだからな。


 ほのかの柔らかい頬に手のひらを添える。

 抑えられない想いがあふれ出し、ほのかまでの距離をちぢめていく。


 その時

「ほのかちゃん、お疲れ~」

 俺の幸せタイムを邪魔するように、イタズラ顔の親父が店に入ってきた。

 なんで今ここに来やがった?

 空気読めよ。

 ぜってぇ確信犯だろ。


 親父の声に驚き、慌てて俺の腕の中から逃げ出したほのか。


奏多(かなた)さん……お疲れ様です……」


 今日もありがとねと、ほのかに紳士スマイルを見せた親父。

 俺と目が合った時には、すでに子供をいたぶる悪魔目に変わっていた。


「綾星、ダメだろうが」


「は?」


「ほのかちゃんのこと困らせちゃ」


 悪魔親父はクククと笑っている。


「今すぐ退散しろよ!」


 俺は親父に強めな言葉をぶつけた。

 邪魔するとか意味わかんないし。

 一日のうちでほのかが仕事終わりの今が、一番跳ね上がるんだよ。

 ほのかを抱きしめたい欲求指数が。

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