ドロ痛な恋が甘すぎて
「わかった、これからはしない。店ではな」
「そろそろ綾星の部屋に行ったら? 二人の時間減っちゃうぞ」
「あっその前に、急いで割りばしの補充を終わらせますので」
「ほのかちゃん、もういいもういい。お疲れ、今日もありがとね。あとは俺がやっとくから」
「奏多さん……でも……」
「俺、ほのかちゃんに特別手当をあげたいくらい」
「え?」
「息子の世話代として」
「は? 親父、なんだよそれ!」
大声で噛みつく俺に、親父はアハハと笑いながら俺の髪をわしゃわしゃとかき混ぜだした。
「やめろ!」
「良かったな、綾星」
親父の瞳がいきなり穏やかになった。
子供を思う父親みたいなマジ顔、ここでするな。
こっちが恥ずかしくなるんだから。
「大事にしろよ」
「は?」
「綾星の一番大切なもの」
頭の上に置かれた手のひらは、想像以上に温かい。
『俺も親父みたいな大人になりたい』
素直にそう思えた。
けど……
恥ずかしすぎる。
父親に素直とか、顔燃えるし。
俺はそっぽを向いて「わかってるよ」と不愛想に答えるので、精いっぱいだった。