ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目
「その代わり、俺のファンに刺されないかは気をつけて」
さ……刺される?
ファンって、お弁当屋さんの前で綾星くんを取り囲んでいる女の子達のことだよね?
お弁当屋の店員さんってだけなのに、熱狂的な綾星くんファンがいるってこと?
「刺されそうになったら……助けてくれる?」
「バーカ」
ほえ?
「刺されそうになったら自分で避けろ」
ノロマな私には、難易度高すぎだよ……
刺されそうになった時の自分を想像して身震いしていると、無邪気な笑い声が耳に降ってきた。
「ほのかは無抵抗で刺されるわけ?」
「反射神経悪すぎだから……避ける自信ない……」
「ほのかってマジで面白い」
そんなに笑わなくてもいいのに。
ケラケラ声をあげ笑う綾星くんに、軽い怒りを込めて唇を突き出した。
でも、全く効果なし。
目を細めて睨んでみても抑止力にもならない。
それなのに。
いきなり綾星くんがフッと真顔になり、二人の間に静寂が訪れた。
さっきまでケラケラ笑ってたのに。
綾星くん、真剣な顔でどうしちゃったの?
「マジで来いよ」
「え?」
「俺の歌……聴きに……」
真剣な瞳に私の瞳の奥の奥まで見つめられ、絡みついた視線をほどくことができない。
この瞳……
苦手だ……
綾星くんが何を思っているのか、全くわからなくなるから。