ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目
「ど……どうぞ」
私の声を聞いて玄関に入ってきたけど。
綾星くん、なんか怒ってるよね?
私がライブを見に行っちゃったことが嫌だった?
それとも握手会に参加しちゃったのがダメだった?
顔色を伺うようにオドオドと綾星くんを見上げてみたけれど、鋭い瞳で視線がはねのけられた。
とりあえず謝らなきゃ。
「ごめん……」と声を震わせた直後、予想外の声に驚き私の呼吸が止まる。
え?
綾星くんが謝った?
玄関で靴を履いたまま、笑顔も全くない綾星くん。
ごめんってなんのこと?
「えっと……」
「握手会の時……ほのかのこと知らないふりして……」
「え?」
「ファンの子達の目があるから、知ってるふりできなかった……」
そのことを謝るためにわざわざ来てくれたの?
「私もごめんなさい。ライブに行っちゃって」
「春輝がチケット入れたんだって?」
「ポストに入ってた……」
「春の行動、俺でも理解不能だから。迷惑だったよな?」
なんでそんな、自信なさげなに視線を落としてるの?
悪魔モードの時はもっと瞳を輝かせるのに。
「迷惑なんかじゃ……なかったよ……」
でも……
本当に私なんかが行っていいのか、すっごく悩んだ。
そんな言葉を飲み込む私。
玄関に立ったまま、私たちの間に気まずい時間が流れる。
どうしよう、リビングにどうぞって誘う?
でも忙しいだろうし、迷惑だよね。
「俺、帰る。それだけ伝えたかっただけだから」
どうしよう、帰っちゃうよ。
きっと綾星くんとは、これでお別れになっちゃう。
綾星くんに言いたいことがたくさんある。
聞いて欲しいこともたくさん。
教えて欲しいことも。
あの帰り際のキスのこと……