ドロ痛な恋が甘すぎて

 ちょっと待って、いまって何時?

 慌てて時計に目を向ける。

 ひゃ、もうすぐ夜中の12時だよ!!

 とりあえず綾星くんを起こさなきゃ!!


 優しく肩を揺すってみた。

 でも全然、起きる気配なし。

 私はベッドの上に正座をしたまま、綾星くんの耳元で小さめな声を震わせる。


「綾星くん、起きて」


 綾星くんの肩がビクンと飛び跳ねる。

 よかったぁ。

 起きてくれそう。


「綾星くん、もう帰らないと」


「……嫌」


 え?


 さっきまで私の頬を包み込んでいた綾星くんの手の平が、また私の頬に戻って来て温もりを与えてきた。

 ベッドに伏せていた綾星くんの顔が、スローモーションのようにゆっくりと私の顔に近づいてくる。


 何が起きているの?

 脳に聞いても何も答えてくれない。

 でもはっきりわかること、それは……

 綾星くんの柔らかい唇が私に重なっているという事実。


 一瞬だけ触れて、綾星くんの顔がベッドに向かって落ちた。


「いってぇ~」


 衝撃が強かったのか、目覚めるように飛び跳ねた綾星くん。

 私はまだこの状況がのみこめず、固まったまま。
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