ドロ痛な恋が甘すぎて


 私が口を開こうとした時、弱々しい声が私の耳に響いた。


「また、見に来いよ」


「え?」


「俺の……ライブ……」


 私が言おうと思っていた。

『ライブ見に行ってもいいかな?』って。


 それなのに綾星くんから言ってくれた。

 たったそれだけのことが、なぜか嬉しくてたまらない。


 私は思いっきり激しく「うん」と首を立てに振る。


「あとさ、また読みに来たい……」


「え?」


「ドロ痛……」


 それってまた会えるってこと?


「うん……いいよ……」


「来週のライブの後でも……いいか?」


「……もちろん……です」


「じゃあ今度は、俺が夕飯作るから」


 その言葉と優しい笑顔を残して、綾星くんは玄関から出て行った。






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