【完】恋の治療は保健室で
平川君と若菜も帰っていった。残ったのはあたしと薬師寺先生だけ。

「奏、顔を見せて。少し腫れているから薬を塗っとこう」

先生は何も言わず腫れた頬に薬を塗ってくれた。

「今日はごめんね。でもありがとう。龍也にお説教してくれて」

「そんなお説教だなんて。ただ言いたいことを言っただけです。結局また怒りに任せて言葉を発しただけですし...」

「それでも少しは龍也に届いたと思うよ」

「よく頑張ったよ奏」

優しくて頭を撫でられた。こんな時まで冷静でいられるなんて大人って凄いな。それに比べてあたしはまだまだ子供だ。あんなに感情移入して話して。いつもそうだ。いつも自分の怒りの感情に我を任せて言葉を発している。早く大人になりたい。なって冷静を保てるような、薬師寺先生のような大人になりたい。
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