黙って俺を好きになれ
シャワーを浴び、誰もが知るアパレル量販店のタグが付いていたボトルネックのニットワンピースに袖を通す。昨晩、山脇さんから手渡された紙袋に入っていたものだ。

サイズのわりにロング丈になったのはいいとして。・・・色の選択基準は単純に、女性だから赤のイメージだったのか。無難なモノトーン系色から冒険できない自分だったら間違っても選ばないけど、厚意を無下にはできない。

「すみません、着替えまで」

チャコールグレーのシャツに黒いスラックスの、幾分ラフな格好でソファに腰掛けた幹さんにお礼を言うと。傍に立つ私をひと通り眺めて顎の下に手をやり、思案気な仕草。

「・・・せっかくだ、飯のついでに出かけるか」

ベッドから出たのも遅かったから、すでにランチに近い時間で。簡単なものでも作れればと思ったのにここはセカンドハウスらしく、調理器具もなにも揃っていないのだ。

「お前はそういう色も似合うぞ?悪くない」

「ありがとう、・・・ございます」

ふっと笑まれて素直に顔が火照った。気恥ずかしさで目線が泳いだ途端、腕を引かれて幹さんの膝の上に座らされてしまう。
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