黙って俺を好きになれ
①バッグからお財布を出す間もない。
②すぐに帰るどころか帰してもらえない。
③SNSのアカウントもない。
④ドタキャンというより、ほぼアポなし訪問。
⑤・・・お酒の席は日常茶飯事。

ひとつひとつ思い浮かべて検証。

「仕事の接待・・・みたいなのは多そうだけど、他はあんまり当てはまらないかも」

昨日の夕飯に作ったピーマンの肉詰めを箸で挟み、苦笑い気味に答えた。

「接待って営業やってる人?」

「・・・会社経営?」

「社長?!学年1コ上って言ってなかったっけ?」

今度はエナが目を丸くしている。

「なんの会社?大っきいの?」

「えぇと詳しくは聞いてなくて。でもそんなに大きい会社じゃないと思うけど・・・」

「ねぇ糸子。その彼氏と結婚するの?」

アジア系ハーフ美人の上目遣いにどことなく気圧される。

「・・・まだ付き合ったばっかりだし、どうかな・・・」

顔が強張りかけたのを無理やり口許を緩め、さり気なくお弁当箱に視線を逃した。
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