黙って俺を好きになれ
6-3
部屋に着くなり幹さんの好きにされ、目が醒めてからもじっくり貪られてベッドから出られたのは、もうお昼近くだった。

昨晩から優に12時間以上。バレンタインチョコの代わりに渡したプレゼントが効いてしまって、・・・なのか。腕の中に私を閉じ込めっぱなしで、どこかしらに触れたがる幹さんは男らしかったり悪戯っ子じみていたり、甘かったり。

調理器具や、ランチくらいじゃとても消費しきれない食材がいつの間にか用意されたキッチンで、鶏肉とキノコの和風パスタの下ごしらえ中も、背後から回ってきた腕に捕まって自由に動けない。

「幹さん、大人しく向こうで待っててください」

「つれねぇな」

お願いしても、しれっと返されるだけ。子供をあやす要領でときどき躰を引き剥がしつつ、サラダ用の紫タマネギをスライスしている頭上で上機嫌な声がした。

「料理の腕は母親ゆずりか?」

「半分は自己流です。前にお父さんが入院したときから家事を手伝うようになって、教えてもらったのを簡単にアレンジしたり。お母さんは料理好きなんですけど私はそれほどでもないので」

「俺はお袋の味は憶えちゃいないからな、イトコが作るものなら何でも褒めてやる」

何気なく人が悪そうに笑った気配に聞き逃すところだった。お母さんの味を覚えていない・・・って。思わず手が止まった。
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