黙って俺を好きになれ
窓の外は薄日が差す寒空だけど、部屋の中は暖房が行き渡って春めいた心地。お腹も満たされて眠りに誘われて、今だけは何もかも忘れて安らげているなら。少しは私がここにいる意味もありますか・・・?

グレーのシャツをラフに羽織り、下は細身のチノパンで珍しくカジュアルな装いのあなた。独特の空気感が薄れればどこにでもいる普通の人と変わらない。

棲む水が違うなんて嘘みたいに流れてる時間はたおやかで。たとえ仮初めの楽園なんだとしても。二人が二人でいられたら幸せだと思えた。

前でそっと屈んで無防備な寝顔を見つめた。

ここが作られた箱庭で、いつか壊されてしまうかもしれなくても。私と幹さんに他の居場所はない。胸の奥がきゅっと竦んだ。

迷いはある、怖さだって。

・・・でも代えられない。

守りたい。大事にしたい。

あなたのために。

きっと欲しくても手に届かなかった、優しい場所(セカイ)を。
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