黙って俺を好きになれ
そばにいることで幹さんが矢面に立たないよう自分もしっかりしないと。せめて、山脇さんに身を引けと迫られないくらい。

「幹さん」

スマホを握る指に力を込めた。

「ちゃんと強くなります、・・・私」

『気負うなよ。男の立つ瀬がなくなるだろうが』

途端に甘やかされ、見えない掌で頭を撫でられている。飴と鞭。・・・飴の方が多め。

ああ、と思い出したように幹さんが付け足した。

『ついでだイトコ。週末は野暮用で留守にする。日曜の晩、顔を見に寄るからそこで大人しくしてろ』

「・・・わかりました。待ってますね」

『つれねぇな』

会えないのかと思ったら瞬く間に心が(しお)れていくのを、平静を装った。すかさず不服そうに返る。
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