黙って俺を好きになれ
昨夜。遅くまで待っても幹さんからの着信がなかった。予定が長引いたのかも知れないし、なにか急用ができたのかもしれない。そう自分を納得させようと思った。

だとしても一言もないなんて。約束を違える人じゃない。思い切って自分からかけた。呼び出しても応答してくれなかった。かけ直してくれるのを待った。一晩。朝になってもスマホは黙ったままだった。

矢も盾もたまらず秋津組のニュースを検索した。それらしい記事はなかった。ほかの事件事故も片っ端から。でも『小暮幹』の名前は見つからなかった。

どうして。なにかあったんですか、幹さんっっ。

全身で悲鳴を上げた。怖くなって涙が滲む。連絡できないのか、しないのか。信じて待っていればいいの?!待ってるしかできないの・・・?!

生まれて初めて言い知れない絶望感に飲み込まれた。私と幹さんを繋ぐものが電話番号ひとつだけだったこと、見えない(もの)しかなかったこと。

夜になったら人が悪そうな顔で会いにきてくれるかもしれない。・・・信じたかった。幹さんが私を置き去りにするはずがない。信じていた。信じないと自分が壊れると思った。

時間がどんな風に過ぎていったのか。憶えていなかった。
何かがどんどんすり減っていく感触しか。憶えてなかった。




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