黙って俺を好きになれ
幹さんは私を残して死んだりしない。奥底で繰り返す。死神でも閻魔大王でも、私を好きにしていい。寿命ならいくらでも差し出します、代わりに地獄に堕ちます。だから幹さんだけは。

追い詰められながら(すが)るように呟く。

「・・・・・・帰ってくるって言ったの」

「こなかったら?」

「・・・・・・・・・・・・」

「小暮幹が帰ってこなかったらオレと結婚して、糸子さん」

私は黙ったままでいた。

「糸子さんの弱いとこも強いとこも、可愛いとこもそうじゃないとこも知ってる。ストーカーかってくらい糸子さんにベタ惚れのオレのとこにおいでよ、・・・ぜんぶ丸ごと引き受ける。一生、糸子さんの一番が小暮センパイでも」

最初は子供に言い聞かせるみたいに。最後は真綿で包み込むみたいに。
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