黙って俺を好きになれ
これまで幾度となくその選択肢を迫られた。光か闇か。普通かそうでないか。正解はどっちか、・・・筒井君か幹さんか。

あの図書室がすべての始まり。今に繋がる答え。ただそれだけなんだと。

「幹が使えねぇ(なまくら)になったら、いつでも俺が引導を渡す。アンタもよく憶えとけ」

山脇さんは無意識にか、『つかさ』と下の名前を呼んだ。主従だけの関係じゃない気はしていたけど、放たれた冷ややかさには情の欠片も感じなかった。

「幹さんは強い人です・・・!自分の生きる道を受け止めて逃げなかったんですから」

本気で言っているのを分かったからこそ思わず返してしまった。どこにそんな度胸が潜んでいたのか、火事場の馬鹿力・・・とでも言うか。

「先輩は本当は家を継ぎたくなかった・・・。でも今はそれを背負うって決めてるんです、使えなくなんてなりません。山脇さんなら分かるんじゃないですか?」

自分はどう思われても何を言われてもいい。だけど幹さんのことはちゃんと解ってほしい、その一心で。

「少し寂しがりですけど、幹さんは自分を甘やかす人じゃないです。あの頃から変わってない、だから私は・・・っ」

あなたを見つめるだけで終わらない。背中を見送ったりしない。今度こそ。
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