黙って俺を好きになれ
「足が付くくらい、嬢ちゃんでも分かるだろうが」

機械人間なのかと思うほど非情に聞こえ、山脇さんを思いきり睨み据える。

頭では飲み込んでいた。病院に運んだら警察の介入を免れないから、ただの整体院じゃないここで治療を受けたんだろうってことも。

でもだからって。心が飲み込めない。潔く死を覚悟するのが極道なの?しがみついちゃいけないの?、生きることに。

「勝手にあきらめないでください。私はいやです、そんなの絶対に・・・!!」

言い放って、床に膝をつくと点滴が繋がれている方の手を両の掌で包む。そして祈るように額を寄せた。

「幹さん起きてください。私です、イトコです。どうして帰って来てくれなかったんですか。約束破るなんてひどいです。信じてずっと待ってたのに、・・・電話くるの待ってたのに、どうして何も言ってくれないの幹さん・・・っ」

涙声になる。

熱を感じる。生きてる。きっと届く。幹さんは目を覚ましてくれる・・・!顔を上げ、目を閉じたきりのあなたに向かって全霊をこめる。

「もう会えないと思ってた先輩とまた会えて嬉しかったんですよ?好きになるのが怖かったのにやっぱり好きになって、お父さんとお母さんには一生嘘を吐いてでも、幹さんのそばにいようって決めたんです。それなのに私を残して死ぬんですか?独りにするんですか?このまま筒井君に貰われちゃってもいいんですかっ?」

刹那。

包んでる手の中で微かに動いた気がした。自分のじゃない指先のどれかが、微かに。
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