黙って俺を好きになれ
「怪我・・・とかしないように頑張ってください」

『がんばってください』って表現が果たして合うのかどうか。すると小暮先輩は一瞬黙ったあとで肩を揺らし、大きく笑い声を立てた。

そんなに可笑しなことを言ったのかと茫然と見上げてるうち、次第にクックッと笑いが収まってくる。

「いや、昔も同じことを言ったろうが。本当に変わらねぇな」

言った本人は憶えてませんが。とも言えず。

「まあイトコが言うなら、せいぜい長生きするか」

頭の上に乗った大きな掌の温もりと声は優しく伝わってきて。

“ヤクザ”は悪い人だけど。
先輩はそんな人じゃない。

誰に向かってなのか自分でもよく分からずに、胸のうちで呟いた。
< 21 / 278 >

この作品をシェア

pagetop