黙って俺を好きになれ
マンションのエントランス前に横着けされた車から降りたとき、初めて地上から建物を見上げた。幹さんに連れられると、立ち止まる隙もなかったのをふと思い返して。
8階建て、ライトグレーと黒のツートンカラーでシックな外観。やや南西向きで陽当たりも悪くない。地図アプリによれば最寄り駅から歩いて12分くらいの立地、前の通りは車の往来があるせいか、小さい子供のいる世帯が少ない印象だった。今までと比べればかなり街中で、のどかな環境に親しんできた自分には慣れるまで少し時間がかかるかもしれない。
「・・・おい」
立体駐車場に車を移動して戻った低い声に急かされ、辺りをぼうっと眺めていた私は小走りに後ろをついていく。オートロックを解除し、エレベーターに乗り込む前に山脇さんは「貸せ」と両手の荷物を取り上げた。お礼を言ってもだんまりだったけど、今さら気にはならなかった。
5階で降り通路を右へ。角の505号が幹さんの部屋。自分の家のように玄関ドアも解錠した山脇さんに続いて、三和土にショートブーツを揃えた。廊下の突き当たりには柔らかい陽の光が差し込むリビング。ソファに腰かけた幹さんの姿が目に飛び込んで、思わず駆け寄っていた。
「幹さん・・・っ」
8階建て、ライトグレーと黒のツートンカラーでシックな外観。やや南西向きで陽当たりも悪くない。地図アプリによれば最寄り駅から歩いて12分くらいの立地、前の通りは車の往来があるせいか、小さい子供のいる世帯が少ない印象だった。今までと比べればかなり街中で、のどかな環境に親しんできた自分には慣れるまで少し時間がかかるかもしれない。
「・・・おい」
立体駐車場に車を移動して戻った低い声に急かされ、辺りをぼうっと眺めていた私は小走りに後ろをついていく。オートロックを解除し、エレベーターに乗り込む前に山脇さんは「貸せ」と両手の荷物を取り上げた。お礼を言ってもだんまりだったけど、今さら気にはならなかった。
5階で降り通路を右へ。角の505号が幹さんの部屋。自分の家のように玄関ドアも解錠した山脇さんに続いて、三和土にショートブーツを揃えた。廊下の突き当たりには柔らかい陽の光が差し込むリビング。ソファに腰かけた幹さんの姿が目に飛び込んで、思わず駆け寄っていた。
「幹さん・・・っ」