黙って俺を好きになれ
隠し部屋のベッドで寝返りも打てずにいたのが、つい一週間前だなんて信じられないくらい。左の脇腹に負った刺し傷は、内臓を逸れていたから回復は早いと電話でも聞いていたけど。黒いシャツをラフに着こなしたあなたは本当にどこも変わらなく見えた。

「来たか」

伸びてきた手に引っ張られ、幹さんの隣りにお尻から沈む。待ちかねたように後ろ頭が抑えこまれると一息に深いキスが繋がった。

強かにしなやかに口の中をなぞられる感覚に躰の奥底がゾクリと粟立つ。閉じた瞼の裏で火花が散る。足りない、もっと。欲情に煽られるのをなけなしの理性でブレーキをかける、山脇さんの存在を歯止めに。・・・自分でも知らなかった。こんなに幹さんの温もりに飢えていたこと。

キスだけで押し上げられそうになる前に解放してもらえ、酸素を求めて喘ぐ私の口の端を舐め取ってから頭の天辺に幹さんの吐息が埋まった。

「・・・邪魔がなくなったら可愛がってやる」

仰いで目が合えば、妖しく口角を上げた不敵な顔で。

「お前に欲しがられるのも悪くない」

なんだかどれも見透かされている気がしてひどく恥ずかしくなった。片時も離れないで甘やかしてほしい・・・なんて。自分がどうかしている。
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