黙って俺を好きになれ
膝の上できゅっと両の掌を握り込む。

幹さんは一度決めたら翻さない人。分かってる。・・・分かってる。でもだからって、そんな突き放した言い方するなんて。

悲しかった。口惜しい気もした。

「・・・山脇さんは幹さんの世話係だったって聞きました。子供の頃からそばにいたのに冷たいと思います・・・っ」

「・・・・・・生きてたんだ、嬢ちゃんにとやかく言われたかねぇな」

「ッ・・・、それはそうです、けど」

「幹はガキん時からどっか偏ってやがる。・・・欲しがりなクセして、手前ェには執着がねぇ。長生きさせたかったら嬢ちゃんがどうにかしろ。子守りは俺の役目じゃねぇよ」

それきり山脇さんは何も言わなくなった。
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