黙って俺を好きになれ
「返事は今じゃなくていいです。でもオレは本気です。いつの間にかセンパイを好きになってました。弟みたいにしか思われてないのは分かってます、だから少しでいいんで男として意識してください。自分で言うのもなんですけど、糸子さんにはオレみたいなのが合うと思うんで」

一息に、言うだけ言うと筒井君はあっけらかんと笑った。

「あーやっと言えたー、スッキリしたー!」

筒井君が私を好き・・・?

初めは驚きすぎて、何が起こったのかとただ混乱した。真剣に見えたし、こういう悪質な冗談を言う子だとも思えなかった。だけど。

普通に考えて、富士山が一夜にして真っ平らになるくらい『無い』。彼は少し童顔でも女子社員に人気があって、ある意味『よりどりみどり』なくらいだ。面白味も愛嬌もないつまらない私を好きになるなんてあり得ない。

もしかしてエナと二人で私をからかってる?クリスマスのドッキリとか。やっと言えてすっきりしたって言うのもネタばらしができるって意味で、きっとそう。

「・・・えぇとあれでしょ、エナの悪戯?告白ゲーム、・・・みたいな」

苦笑い気味にそれだけを言う。すると。

「うわーエナさんが言ったとおりだー、糸子センパイは絶対に信じないから死ぬ気で告れってー」

天を仰いだ筒井君は頭をくしゃくしゃっとして、深い溜め息を吐く。
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