黙って俺を好きになれ
「とにかくオレは糸子センパイが好きなんです!」

「・・・あり、がとう」

喰ってかかられそうな勢いに押されて、もごもごと返すと。

「分かってくれればいーんですよー。センパイほんと鈍感で、オレどーしようかと思った-」

ふにゃっと笑って筒井君が元に戻った。

なんていうか。いつもふにゃふにゃしてる彼はあれは実は着ぐるみで、この毒舌気味な押しの強い方が本当の中身だったのか・・・・・・。

新しい発見と言えばいいのかよく分からないけど、小賢しさとか陰険とか、そういう厭らしさは全く感じないのが不思議だ。清々しい押しの強さを筒井君らしいと思えてしまうのは、彼本来の人となりなんじゃないかと思う。

会社のお酒の席で必ず私のところに来るのも、彼なりの気遣いだったんだと今さらのように。後輩として面倒をみてあげたくなるタイプで、好ましいか好ましくないかで言えば『好ましい』人。

でも。

「あの・・・筒井君」

言いかけたのを筒井君はわざとらしく手で制して、困ったように笑う。

「言ったでしょー、返事は今じゃなくていいって。もっとオレをちゃんと知ってからフってくださいよー」

先回りされた。
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