黙って俺を好きになれ
筒井君の口ぶりからすると、どうやらエナは彼の気持ちを知っていたみたいだし、もろもろが腑に落ちてしまう。気が付いたら三人でご飯に行くようになって、送ってもらう図式が出来上がっていたことも。

私をいつの間にか好きになっていたとか、赤面しそうなことをあれこれ言われた気がする。・・・申し訳ないけど、ところどころ記憶が飛んでる。

一体どこをどう好きになってくれたのか。そういうのは理屈じゃない、って漫画やドラマのセリフと。小暮先輩の低い声が頭の隅をよぎった。

『俺はお前を気に入ってる』

あれはあくまで“図書室のイトコ”の延長線として・・・?でなければ再会して二度目に出てくるセリフとも思えない。

筒井君の気持ちは嬉しいというより、ありがたい気持ちだった。こんな取り柄もない自分に好意をもってくれ、あんなに率直に伝えてくれた。私にはもったいなさすぎるくらいだ、押しの強さや多少のことを差し引いても。

彼みたいな男性とつき合ったら楽しいかもしれない。素直に思う。歳下とか歳上とかは関係なく、どんどん自分を引っ張ってくれるタイプだったら。頑張ってついて行くうちに隣を歩けるようになるかもしれない。

私だって頑なに過去を引き摺っていたいわけじゃない。

ふっと息を逃す。
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