黙って俺を好きになれ
途中で寄り道した海産物の直売所では、産地が違うけど美味しそうだった海苔の佃煮やちりめん、わかめも買ってしまった。実益を兼ねたお土産を選ぶ私に、「いいお嫁さんになれますよー」としみじみされたのは聞こえないフリで。

そこを後にしてしばらく高速には乗らず、車は海沿いを走り続け。景色にばかり気を取られていたら隣からクレームが入った。

「糸子さん、運転手をほったらかしすぎー。ちょっとはオレをかまってくださいよ-っ」

・・・失礼しました。





アパートに戻ってきたのは18時近く。約束どおり直売所で買ったみりん干しを焼き、輪切りレンコンの水煮でキンピラを作った。お母さんに持たされた松前漬けも並べて筒井君にご馳走する。

「のっけから糸子さんの手料理たべられるなんて、今年はなにやっても上手くいく気がするー」

ほくほくの笑顔でご飯をおかわりする大型犬。頭を撫でてあげたくなるような情も湧いた。・・・憎めない男の子としてちょっとだけ。

そして21時には拍子抜け・・・なくらい、あっさり帰って行った。「これ以上いるとオオカミになっちゃうんで-」とふにゃふにゃ笑いながら。
< 71 / 278 >

この作品をシェア

pagetop