黙って俺を好きになれ
ついでに誘われたウィンドウショッピングにも付き合い、周囲を見渡せば男女の二人連れや家族連れで賑わっている。自分達も傍からは恋人風に見えてるんだろうか。

迷子になる前提でずっと繋がれている手。筒井君の肩くらいに私の頭がならぶ感じで、曰く『ちょうどいい』身長差なんだとか。

もし会社の誰かに見られたらと思うと気もそぞろになるけど、隣りの彼は全く意に介さない様子でふにゃふにゃ笑っている。・・・強心臓がうらやましい。

ふらっと立ち寄ったショップで、ワークブーツを試着する筒井君のボディバッグを預かってあげたら、『めちゃくちゃ彼女っぽいー』と目を輝かせながら尻尾を振り回していた。違う相手だったら思いきり引きそうだったけど、まあいいかと思えてしまうのは彼だから。なのかもしれなかった。




すっかり陽も落ちた頃ショッピングビルを後にする。思ったより混雑する帰りの電車の中では私をガードするように立ってくれ、ふにゃふにゃしていても気遣いはいつも何気ない。

本当に。社交性も女子力にも乏しい私のどこを好きになってくれたんだろう。一緒にいればいるほど不可解なキミ。



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