黙って俺を好きになれ
4-3
キャメル色のダッフルコートを羽織り、バッグを手にアパート前で迎えを待つ。だいたい時間どおりに右手から車のヘッドライトがこっちに向かってくるのが映った。
黒の高級セダン。少し先に寄せ静かに停車すると、黒ずくめの運転手さんが回り込んで後部ドアを外から開ける。悠然と姿を見せた三つ揃い姿の先輩は「待たせたな」と満足げに私の髪を撫でた。そして。
「・・・イトコが言ってたボーヤか。用が無いならさっさと帰れよ?」
隣りに立っていた筒井君を一瞥していなし、まるで眼中にないように私の肩に腕を回して見下ろす。
「今夜はゆっくりできる。これでもお前の為に仕事を片付けたんだ、少しは労え」
人が悪そうに笑み、聞こえよがしに言ったのも分かっていた。
居たたまれなかった。二人を引き離してしまいたい衝動に、私は顔だけ筒井君に向け、強張る口許をどうにか緩めてみせた。
「遅くなるから気を付けて帰って・・・?」
小暮先輩が来るまで帰らないと、譲らなかったのは彼だった。とどめる権利もなく内蔵がねじ切れそうな心地がしていた。
黒の高級セダン。少し先に寄せ静かに停車すると、黒ずくめの運転手さんが回り込んで後部ドアを外から開ける。悠然と姿を見せた三つ揃い姿の先輩は「待たせたな」と満足げに私の髪を撫でた。そして。
「・・・イトコが言ってたボーヤか。用が無いならさっさと帰れよ?」
隣りに立っていた筒井君を一瞥していなし、まるで眼中にないように私の肩に腕を回して見下ろす。
「今夜はゆっくりできる。これでもお前の為に仕事を片付けたんだ、少しは労え」
人が悪そうに笑み、聞こえよがしに言ったのも分かっていた。
居たたまれなかった。二人を引き離してしまいたい衝動に、私は顔だけ筒井君に向け、強張る口許をどうにか緩めてみせた。
「遅くなるから気を付けて帰って・・・?」
小暮先輩が来るまで帰らないと、譲らなかったのは彼だった。とどめる権利もなく内蔵がねじ切れそうな心地がしていた。