歩くということ
先生に言われ、青葉は俯いてしまう。両親や先生など周りの大人は小児外科医なんてなれないと青葉に言ってくる。しかし、青葉は他のどんな仕事を見ても心に響かない。小児外科医しか夢として追い求められないのだ。

夢を叶えるために好きな道を歩くのはいけないことなの?

そう訊ねたかったが、青葉は口を開くことができなかった。



三者面談の翌日も、空は美しい青に染められていた。気温は四十度近くまで上がるらしい。しかし、青葉の姿は屋上にあった。

「へえ〜……。お前そんな風に言われたんだ」

スイカ味のアイスキャンディーを食べながらだらしくなく制服を着崩した男子が言う。男子の名前は若葉(わかば)。青葉の親友だ。

「うん。僕はどうしても小児外科医になりたいのに、大人はみんなこの夢を応援してくれないんだ」

レモン味のアイスキャンディーを食べながら、青葉は昨日のことを若葉に話していた。若葉とはどんなことも相談しあえる仲だ。
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