歩くということ

「俺の家は放任主義だからそんなこと一度も言われたことないけど、お前ん家は大変そうだな」

「僕が病気だったから、お母さんたちは僕に地元に残っててほしいみたい。でも、やっぱり夢は諦めたくないよ！だって一度きりの人生だから！」

まだ中学生の青葉は、働くということがどんなものなのかはまだわからなくて、弱くて、どうしようも無い存在かもしれない。それでも、夢は届かないと歩くことを諦めてしまいたくないのだ。

「……お前、その夢に覚悟はちゃんとあるんだよな？綺麗なもんばっか見てねぇんだよな？」

青空の下、若葉が不意に真面目な顔になる。彼の夢は世界一の料理人だ。青葉の望む世界とは違う厳しさがある。

「医者って俺にはよくわからないけど、患者さんが死んだりすることだってあるんだろ？めちゃくちゃ忙しい仕事なんだろ？そういうこともちゃんと考えてるんだよな？」

仕事は楽しいだけではない。夢は夢で必ず現実はどこか違うところがある。