歩くということ
「やめてしまいたい、壊してしまいたい、そう思うことってきっとあると思う。でも、やっぱり僕はーーー」

小児外科医になって病気と闘う子どもを救いたい、そう青葉が言うと若葉はまた優しい顔に戻った。そして軽く青葉の肩を叩く。

「覚悟ができてるなら、誰にも止めることなんてできねえよ。スタートを切っちまったらそれぞれの行く場所に知り合いなんていねえけど、それでも夢を選ぶなら辛くないだろ?」

「うん!」

食べかけのアイスキャンディーが溶けようとしている。青葉は慌ててアイスキャンディーを口に入れた。悩んでいるとおいしく感じなかったアイスキャンディーが、今は爽やかな甘さを届けてくれている。

「若葉、ありがとう!僕は小児外科医を諦めない。絶対に家族を説得するよ」

「うん。俺も頑張って勉強して行きたい高校に行けるようにする。夢を夢のままで終わらせるつもりはねえ」

青空の下、二人は手を強く握る。それは夢を必ず叶えるという夏の誓いだった。
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