歩くということ
「夢が叶ったらさ、幸せになれたかどうか答え合わせしようぜ!」

若葉がそう言い、青葉も頷く。

誰に何と言われようと、逃げ出そうとする言葉が飽きるほど浮かんでも、この輝いた夢は手放せないのだ。

夏が、過ぎていくーーー。



あの夏の誓いから数年、青葉はあの時と同じように屋上から夏の青空を眺めている。あの時と違うのは、ここは病院の屋上ということと、青葉が白衣を羽織っているということだ。

「若葉も料理人として修行を頑張ってるし、僕も頑張らないと……!」

何度も挫けそうになったが、やっと小児外科医としてのスタートが切れた。これはきっと若葉と夢を応援し合うことができたからだ。

諦めそうになって、それでも必死になってもがいて掴んだ夢は、まるでこの空の青のように美しい。夢が叶ったこの瞬間を、青葉は決して忘れることはないだろう。

ピリリリリ、と青葉の持っているPHSが鳴り出す。急患がやって来たか、患者の急変だ。青葉は緊張しながら「はい」と電話に出る。
< 6 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop