今は亡き君へ。
クモは——美樹の愛しい彼は、今年も幸せになれよ、と呟くと、姿を消した。

美樹には、聞こえなかっただろうが、何故か美樹の脳内にその声が響いた。

テレパシーだろうか、と美樹は思ったのち、「なんでもいいや。」と呟いた。

だって、生きていれば愛しい人にはまた来年も会える。
短い時間しか会えない訳だけれど、会えないよりはいい。

それに、もし死んだとしても、彼には天国で会える。

お墓を何回も振り返りながら、美樹は墓場をあとにした。

毎年そうなのだが、車に乗る気分にはなれなくて、その辺りを散歩することにした。

そして、コンビニの前まで来ると、懐かしい、と呟いた。
このコンビニは彼とよく行っていたコンビニであり、そして———。

その刹那、車がこちらへと突っ込んで来た。

信号無視か、車が壊れているのか、美樹は車には詳しくないのでわからない。

だけど、美樹は「危ない」
そう思った。

キィィィィ…と、大きなブレーキ音が響いた。
その時には車の車体は美樹の目の前まで来ていた。

ああ、死ぬんだ。
と美樹は思った。

美樹には全てがスローモーションに見えた。

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