ほんとは、ずっとキミのこと、
私にはずっと好きな人がいる。
一年の時から同じクラスの、工藤真夢くん。
イケメンで、背が高くて、賢くて、一年からサッカー部でスタメンに入っている。全て整っている完璧な彼。

「楠本、今日掃除サボるわ」
出席番号が前後の私たちが掃除当番だった日。
工藤くんは後ろの席から私にそう言った。
私が後ろを振りかえると、すぐそこに彼の顔があって。
「なんか顔赤くない?」
そう言われるまで私は彼から目を離すことができなかった。

一目惚れだった。
工藤くんに恋なんか、本当に私は馬鹿だ。

そしてその日の放課後、私は1人で掃除していると、廊下から女子の泣き声が聞こえた。
「どう、どうし、て、、だめ、なの、、?」
そしてその向かい側に、工藤くん。
「行くから」
モテるんだなあ、軽率にそう思った。
もっと話したい。
もっと近づきたい。
初恋だった私は工藤くんを思う気持ちを止めることはできなかった。

工藤くんに告白して泣いている子はその子だけじゃなかった。
私はその場面を何度も見てきた。
そして工藤くんを茶化していた。私の気持ちは隠して、、、

そして私はこんな噂を聞いた。
『工藤くんに告白して振られたくないなら、C組のヒイラギさんに伝えるといいよ』

私はすぐにC組に行った。

私は目を疑った。

そこには私とは同い年とは思えない女の子がいたから。。。
私が呆気にとられていると、すぐ横を工藤くんが通りすぎた。
「ニノ、帰るぞ」
私はその時初めて、工藤くんがその女の子に優しく笑いかけているのを見た。
もしかして工藤くんは、、、
そして誰がどう見ても美男美女の2人は仲良く帰っていく。
「私とは釣り合わないのかな、、」

そして次の日。
私は当たって砕けようと決めた。

「ヒイラギさん、いますか?」
野球部であろう丸刈りの男子に話しかけた。
「え、俺!?」
一瞬で顔が赤らむ。
「俺かぁーーー」
そう言ってヒイラギさんを呼んでくれた。

そんなに可愛いんだろうかと、少し疑っていた。
現れたのは、、昨日の女の子だった。

「どうしたの?」
声が出せなかった。それくらい綺麗で、、
「あ、あの!く、工藤くんと付き合ってるんですか?」
私は自分の気持ちよりも先に聞いてしまった。
「付き合ってないよ、ほんと幼なじみ」
苦笑いしながら彼女が言った。
「あ、あの私、、工藤くんのことが好きで、、」
「わかった。言っとくね」

あ、噂ができるくらいだから私だけじゃないんだ。
彼女の対応を見てそう思った。

数日後。
彼女はちゃんと気持ちを伝えてくれていた。
「楠本、俺、」
私は放課後工藤くんに呼び出された。
「にのから聞いたけど、俺、お前のこと、好きじゃない」
「うん。ありがとう」

噂は噂だ。
真相は、直接告白する勇気のない子が彼の一番仲のいい女友達に打ち明ける。
その子が彼に気持ちを伝え、工藤くんは誤解されないように気持ちだけ伝える。
告白が成功するような噂ではないのだ。

「工藤くんはさ、ヒイラギさんのこと、好きなの?」

「俺が好きになっても、あいつは振り向かないよ」

彼は切なげにそう言った。
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