こじらせ社長のお気に入り
「社長。先ほどは私も失礼な物言いをしました。すみません」

「いや。笹川さんは悪くない」

頭を下げる私を、副社長がすかさず遮る。それでもやっぱり、さっきの私は社長に対して失礼な態度を取った。そこはなんと言われようとも、紛れもない事実。だから、ちゃんと謝罪をしておきたいと思った。

「さっきの暴言を許していただけるのなら、もうしばらく秘書の仕事を頑張りたいです。せっかく慣れてきたので。仕事ができるのなら、デスクの場所はどこでもかまいません。おふたりの都合の良いところにしてください」

「笹川ちゃん……本当にごめん。俺が調子に乗りすぎたんだ。笹川ちゃんと仲良くなれて、嬉しくて。これからは気を付けるから、この通り、許して」

真面目な顔をして頭を下げる社長に、もうなんのわだかまりもなかった。

「顔を上げてください。もういいですから」

私の言葉に、顔を上げた社長の瞳が切なげに揺れた。
どうしてそんな目をするの?私はもう怒ってないと伝えているのに……




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