こじらせ社長のお気に入り
「あっと。すみません。学生の頃の知り合いで」

「へえ。そんな偶然もあるもんなんだな」

「ですね。驚きました」

山中さんの言葉に答えながら、勇斗が私をじっと見つめてくる。
なんだか気まずい。こんなところで、まさか元カレと出会すなんて、思ってもみなかった。

「笹川さん、ありがとう。下がっていいよ」

お茶出しを終えても身動きが取れずにいた私に、社長が見かねたのか声をかけた。その声音が、いつもより冷たい気がするのは、気のせいだろうか。

「す、すみません。失礼します」

頭を下げると、なんだか逃げるようにしてその場を後にした。








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