こじらせ社長のお気に入り
「びっくりした……」

社長室に戻ると、思わず呟いていた。
どんな偶然よ……
突然のことに狼狽えてしまって、仕事に集中できない。つい、付き合っていた頃のことを思い出してしまう。

『俺のこと、本当は好きじゃないだろ。ていうか、何とも思ってないだろ』

『お前といてもつまんないんだよ。気持ちの向かない相手といてもな』

考えてみれば、ずいぶんひどい言われようだ。だけど、図星過ぎて何も言えなかった……
うん。言われようがひどいんじゃなくて、私の態度がひどかったんだ。

そんな別れ方をして、今更どんな顔をして会えばいいのか、よくわからない。
そもそも、私のことなんて、てっきり忘れられていると思ってたぐらい。彼の中で私の印象は、最悪だろうし。

ただ、別れてからの数年がそうさせてくれたのか、さっきの彼の様子からは、負の感情は見られなかった。突然過ぎて、反応できなかっただけかもしれないけれど……









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