こじらせ社長のお気に入り
「付き合っていたの？」

元カレとの思わぬ再会のせいなのか、社長に知り合いかと聞かれたことの気まずさなのか、妙に焦って落ち着かなくなっていたけれど、今の質問でそんな熱がさっと引いていくのがわかる。

「プライベートなことなので、お答えしかねます」

急にビジネスモードになった私に、社長が眉間にシワを寄せる。
誰が何と言おうと、勇斗と私の関係を第三者に答えなければならないいわれはない。それは〝怒り〟の気持ちからではなくて、社長みたいに地に足をつけて、常に自力で道を切り開いてきたような人に、当時の中身のない自分を知られたくないという気持ちからだった。

「あえて言わないってことは、肯定したも同然だろ」

社長が足を止めたのに合わせて、つい自分も止めて向き合ってしまった。
正解であろうとなかろうと、その問いに答えるつもりはない。




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