こじらせ社長のお気に入り
「まだ仕事が残っています。戻りましょう」
あくまで冷静に言う私に、目を細めて、不満とも微かな怒りともとれる表情を向けてくる。それを振り切るようにして再び歩き出すと、社長も横並びについてくる。
「有原さんと、プライベートで会うのか?さっき、連絡するって」
そんなに大きくない声で話していたつもりだったけれど、どうやら、勇斗とのやりとりはバッチリと聞かれていたようだ。
「会う理由があれば会いますが、なければその必要はありません」
そう。ただ懐かしいからという理由だけで、勇斗と会うつもりはない。
あんな別れを切り出させたのは私のせいだ。
楽しい思い出もあるけれど、それを当事者同士で笑い合うには、結末があまりにも残念すぎる。あの時、私は勇斗をどれだけ傷付けてしまったのだろうか。
そう考えれば考えるほど、やっぱり懐かしさだけでは会えない。
「俺が……理由ができたとしても会わないでって言ったら、笹川ちゃんは頷いてくれる?」
思わず、もう一度足を止めてしまった。私より一歩先で足を止めた社長が、後ろを振り返る。戸惑う私を見つめて、もう一度、言い聞かせるようにはっきりと言った。
「笹川ちゃんのことが好きだから、有原さんとは会わないで欲しい」
「えっ?」
初めて見る男を感じさせる熱い眼差しでそう告げると、社長は私をおいて歩いていってしまった。
社長が、私のことを……好き?
本気?
突然の告白に理解が追いつかず、呆然と立ち尽くしてしまった。
あくまで冷静に言う私に、目を細めて、不満とも微かな怒りともとれる表情を向けてくる。それを振り切るようにして再び歩き出すと、社長も横並びについてくる。
「有原さんと、プライベートで会うのか?さっき、連絡するって」
そんなに大きくない声で話していたつもりだったけれど、どうやら、勇斗とのやりとりはバッチリと聞かれていたようだ。
「会う理由があれば会いますが、なければその必要はありません」
そう。ただ懐かしいからという理由だけで、勇斗と会うつもりはない。
あんな別れを切り出させたのは私のせいだ。
楽しい思い出もあるけれど、それを当事者同士で笑い合うには、結末があまりにも残念すぎる。あの時、私は勇斗をどれだけ傷付けてしまったのだろうか。
そう考えれば考えるほど、やっぱり懐かしさだけでは会えない。
「俺が……理由ができたとしても会わないでって言ったら、笹川ちゃんは頷いてくれる?」
思わず、もう一度足を止めてしまった。私より一歩先で足を止めた社長が、後ろを振り返る。戸惑う私を見つめて、もう一度、言い聞かせるようにはっきりと言った。
「笹川ちゃんのことが好きだから、有原さんとは会わないで欲しい」
「えっ?」
初めて見る男を感じさせる熱い眼差しでそう告げると、社長は私をおいて歩いていってしまった。
社長が、私のことを……好き?
本気?
突然の告白に理解が追いつかず、呆然と立ち尽くしてしまった。