こじらせ社長のお気に入り
「謝るのは俺の方だ。ごめん、笹川ちゃん」

「なにが……ですか?」

「ここのところ、君がよく上の空になっていたのはわかっていた。全部、俺のせいだろ。俺の言ったことが、君を悩ませている」

自分のミスを人のせいにすることなんてできず、なにも答えられない。
確かに、社長に好きだと言われて以来、いつも社長のことを考えてしまっていた。彼が通常運転なことにも、少なからず腹が立っていたし、どうしていいのかわからなくなっていた。

頭の中がぐちゃぐちゃになっていた時、思わぬ言葉が落とされた。


「俺が君を好きだと言ったことは、忘れてくれ。なかったことにして」


……は?


社長は私が何かを言う前に、抱きしめていた腕を離して、私の体を扉の方へ向けさせた。

「会議を1時間ずらすように連絡してきてくれ」

この人は一体なにを言っているのだろうか?
私をからかっていたのだろうか?

呆然としたまま、社長室を出た。









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