こじらせ社長のお気に入り
「山城君、また飲みにでも行こうよ」

17時半頃、打ち合わせを終えたようで、4人が応接室を出てきた。

「そうですね。近いうちに」

お見送りをするために、私も立ち上がって後をついていく。

「あっ、そうだ。有原と笹川さんって、知り合いなんだろ?前に来た時が、かれこれ2年ぶりちかくとかなんだろ?」

突然、よいことを思いついたというように、中山さんが上機嫌で言った。

「そうです」

勇斗はさらっと答えているけれど……付き合っていたことは話していないようだ。

「もうこの時間だ。今日は直帰でいいから、このまま一緒に食事にでも行ってこいよ」

なにを言ってくれるんだ。
こっちの都合をまるっと無視した提案に、言葉が出てこない。

「じゃあ、お言葉に甘えて。柚月、何時に上がれそう?」

私に向けられた優斗の目は、今日こそ付き合ってもらうぞと言っている。
山中さんがいる手前、無碍に断ることはできなさそう。


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