こじらせ社長のお気に入り
多くの人と、その分だけの傘が密集して、すぐに勇人を見つけられそうにないと思っていたけど……
改札近くの壁にもたれてスマートフォンに目を落としている彼は、すぐに見つかった。

こうして見ると、勇斗はかなりかっこいいんだと思う。背は高いし、シュッとしていてスーツの着こなしも抜群だ。
こんなに人が密集しているというのに、自然と彼の周りだけ隙間ができていて、通りかかる女の人達が、彼の方をチラチラと見ているようだ。

「勇斗」

近づいて声をかければ、嬉しそうに微笑んで私を迎えてくれた。

「お疲れ、柚月」

「ごめんね。けっこう待たせちゃって」

「いいよ。さっきまでカフェで仕事してたから」

付き合っていた頃は、あまりよくわかっていなかったけれど、彼の外見は多くの女性を惹きつけたのだろうと思う。きっと、その内面も。


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