こじらせ社長のお気に入り
なんとなく、勇斗のことをチラチラと盗み見てしまう。

「なに?柚月」

「あっ、ううん。なんでもない。それより、どこへ行くの?」

「俺の家って言いたいところだけど、さすがに実行したら柚月に嫌われそうだ」

「まあ……遠慮させてはいただくよね」

再会して以来、あれだけ頻繁に連絡をよこすぐらいだ。彼が私に対して負の感情を抱いていないのとは察しがついている。

そして、私がそっけない返信をする意味も、勇斗は感じているだろう。

「じゃあ、夕飯でも食べに行こう。行きたいところはある?なければ任せてもらうけど」

「お任せで」

「了解。柚月は、洋食より和食だったよな?」

「……うん」

私の好みを覚えていたことに驚きつつ、彼について歩いていった。

そうして連れられてきたのは、いつも使う西口でなくて、あまり行ったこのない東口側にあるお洒落な和風の居酒屋だった。


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