こじらせ社長のお気に入り
「雨、やんできてよかったよ」

「そうだね」

「じゃあ、とりあえず俺はビールで。柚木は?甘いやつ?」

「うん。カシスオレンジで」

そう言うと、勇斗がクスリと笑った。
顔を上げれば、なにかを懐かしむような優しい表情をしていた。

「変わってないなあ。あの時と同じだ。20歳になったばかりで、初めて居酒屋にて連れて行った時から、ビールは苦いからにがってって。ジュースみたいなのばっかり飲んでたな」

なんだか味覚がお子様だと言われたようで、ムッとする。

「どうせ、私は子どもっぽいですよ」

若干トゲのある言い方をしてしまう。こういうところも子どもっぽいんだろうなあ……

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