こじらせ社長のお気に入り
「いや。ホッとした。再会して以来、柚月には学生の頃からは想像できない姿ばかり見せられてたから」

「どういうこと?」

「あの頃の柚月は、俺に言われるまま行動してて、自分の意思はないのかって、最初は心配してた。それがだんだん、俺に気持ちがないからこうなのかって不安になって、積もり積もって不満になってた」

友人の真理と同様の指摘をされて、苦い気持ちになってくる。
勇斗が普通に接してくるから、ついよそ行きでない普段通りの自分で話していたけれど、当時の私の様子は、彼にとって相当不快なものだったのだろう。そう思うと、思わず背筋を伸ばして、仕事中の自分でいようとした。

「ああ、柚月。俺、怒ったりなんてしてないから。そんなふうにかまえないでよ」

勇斗には、私がかしこまったのがすぐにバレてしまったようだ。

「柚月、変わったなあ。すごく……いい女になった」

不意をついて放たれたストレートな言葉に、じわじわと気恥ずかしくなってくる。

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