こじらせ社長のお気に入り
「俺さあ、別れを告げたあの時、本当はまだ柚月のことがすげえ好きだった。だけど、自分ばかりが好きなのかって思うと、虚しくて……
つい、柚月に八つ当たりのようにひどいこと言った」

当時を思い出しているのか、そう語る勇斗の瞳は切なげに揺れていた。
怒っていないと言われても、そんな顔をされたらやっぱり申し訳なく思ってしまう。

こんなに自分を想ってくれていた人に、どうして私は正面から向き合ってこなかったのか。自分自身が嫌になってくる。

「どこかで……どこかで柚月は追いかけてくれるかもしれないって、期待してた。でも、現実にはそうならなくて、ずっと後悔してた。
それから共通の知人に、柚月は人が変わったように勉強を頑張り出したって聞いて、もう俺の入る余地はないんだって諦めたんだ」

当時、勇斗がそんなふうに思っていたなんて、全く知らなかった。てっきり私の態度に腹を立てて、さっさと次に進んだんだって勝手に思ってた。


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