こじらせ社長のお気に入り
「柚月はさあ、俺と別れてから、付き合ったやつはいるの?」

「ううん。いないよ。別れてすぐは、勉強三昧だったしね」

「そうか。俺も。就活や仕事を覚えるのに必死で、そんな暇なかった」

あえて「勇斗は?」って聞かなかったのに、自ら話してくる。
雨はすっかり止んでいるけれど、ジメジメした不快な空気が肌に纏わりついてくる。

「ていうか……何かに没頭してないと、平然としていられなかった。ずっと……柚月のことが好きすぎて、ずっと忘れられなくて」

「えっ?」

思わず足を止めて勇斗を見上げた。同時に足を止めた彼は、熱い眼差しで私を見下ろしていた。




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