こじらせ社長のお気に入り
「どうぞ」

「ありがとう」

コーヒーを目の前に置くと、いつも通りの笑顔が返ってくる。

昨日、勇斗と約束した場にこの人もいたと思うと、なんだか気まずさを感じてしまう。

「午後からは、14時に社内会議があります。その後、特に予定はないので、溜まっている書類に目を通してください」

「了解」

「では、失礼しま……」

「笹川ちゃん。仕事上がりの予定は?」

「えっ?」

不意打ちの問いに顔を上げれば、てっきりからかってくるぐらいだろうと思っていたのに、真剣な顔をした社長がいた。

「今夜の笹川ちゃんの予定は?」

「特にありませんが……なにかありましたか?」

「じゃあ、俺が誘ってもいいかな?」

「えっ?」

どういうことだろう……
戸惑いを隠せずにいると、社長はもう一度言葉を重ねた。


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