こじらせ社長のお気に入り
「俺が笹川ちゃんを、食事に誘ってもいいかな?」

「……どうして……ですか?」

「どうしてかあ……誘いたかったから、じゃだめかな?」

なにそれ。わけがわからない。

「……部下としてですか?」

そう聞き返せば、一瞬、社長は切なげに瞳を揺らした。
可愛げのない返しだって、自分でもわかってる。

「部下としてじゃないと来てくれないというなら、それでもかまわない」

相変わらず、意味深な言い回しをしてくる。
その一層切なさを帯びた瞳に、胸の奥がギュッと苦しくなってしまう。
だめだ。跳ね除けることができない。

「わかりました」

「よかった。細かいことは、後でメールする」


妙にドキドキする胸を押さえながら、自席に戻った。
副社長からの視線を感じたけれど、あえて気付かないふりをして、さっきまでしていた仕事を再開させる。






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