こじらせ社長のお気に入り
「待たせたかな?ごめんね」

「い、いえ。約束の時間ちょうどですから。今日は車なんですね」

「ああ。今朝寄ったところが、交通の便が悪くてね」

「そうですか……」

これ以上、なにを話せばいいのかと、妙に焦ってしまう。

「えっと……どこに向かってるんですか?」

「ん?俺のうち」

「はっ?」

これはまずい。とにかくまずい。
さすがに、一人暮らしの男性の家に行くのはだめだ。

「いや、えっと……それはだめです」

「なんで?俺は笹川ちゃんとゆっくり話がしたいんだ」

「話なら、どこでだってできます。それこそ、会社でもよかったじゃないですか。部下として誘われたんですし」



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