こじらせ社長のお気に入り
「笹川ちゃんのちゃんとした笑顔、初めて見た気がする」

「えっ?」

仕切り直しをするでもなく、唐突に空気を変えられてドキリとする。真剣な眼差しで見つめてくるから、なんだか恥ずかしくなってきて、社長を直視できなくなってしまう。

「会社だと、すっかり仕事一筋だもんな。客を相手に談笑することはあっても、ビジネススマイルだし」

「そ、それは、仕事なので……」

「そう。笹川ちゃんは、本当によく頑張ってる。最初から豪語していた通り、仕事一筋でね」

えっと……なんて言えばいいのか……
これは、部下としてただ褒められてるだけだよね?

「ありがとうございます……?」

「なんで疑問形なの?」

社長はクスリと笑ったものの、なんとなく緊張感を纏ったままだ。




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