こじらせ社長のお気に入り
「笹川ちゃん。話してくれないか?」

「…………それは……上司として、部下のことを把握しておきたいからですか?」

予防線を張るように問いかけると、社長の瞳が切なげに揺れた。

「部下としてなら、話してくれるか?」

社長の口ぶりが、まるで本当は個人として私のことを知りたいと言われてるみたいで、落ち着かなくなる。

「聞かせてくれないか?」

「……私のこと……軽蔑しませんか?」

「しないよ。どんな笹川ちゃんでも」

「私のダメだった、情けない話を聞いても?」

「今のこの笹川ちゃんの姿は、紛れもなく笹川ちゃんの努力で作り上げられたものだ。それを見ているから、過去がどうだろうと、軽蔑なんてするはずがない」

じっと見つめてくる社長の瞳は、普段の軽さは微塵も感じられない。誠実な光を宿している。

これは……流されるって言うんだろうか?
気が付いたら、自ら口を開いていた。

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